インタビュー

草加市在住の狂言師 吉田信海(よしだ しんかい)さん

全国各地の能楽堂が主な公演舞台

野間口 公演活動についてお聞きします。月にどれぐらい公演されていますか?

吉田 多い月には20近くありますが、平均して10弱、年間100公演ほどです。

野間口 全国各地で公演ですから、移動も大変ですね。

吉田 忙しい時は、半月くらい家をあけることもあります。それから狂言は一期一会の世界なので、同じ演目をやり続けることはありません。先日も1日に3舞台あったのですが、全部違う演目でした。最初の舞台が宗家と一緒だったのですごく緊張して大変な1日でした。

ちなみに能というのは分業制になっていて、それぞれの担当は専門家として流派をつくっています。 例えば、主役を担当するシテ方(かた)には、観世(かんぜ)流、宝生(ほうしょう)流、金春(こんぱる)流、金剛(こんごう)流、喜多(きたりゅう)の5流派があります。これらの流派はシテ方しかやりません。

同じように脇役のワキ方(かた)、狂言を担当する狂言方(かた)、謡の伴奏を担当する囃子方(はやしかた)など、それぞれの担当ごとにいくつかの流派があって、一つの公演をやるとなると、シテ方は観世流、狂言方は大藏流、囃子方は何々流でといった具合にそれぞれの流派に声がかかってひとつの能をつくりあげていきます。

野間口 能は2回ほど観ましたが2回とも寝ました!不勉強で申し訳ないのですが、テンポが遅い、内容が難しいという印象しかないのですが…

吉田 能は幽玄の世界を表現していて、登場人物も幽霊だったりします。覚醒と夢の間くらいの意識世界を演じていることも多いので、観ているうちに夢見心地になるというのは、間違った反応ではないんですけど、できれば起きて観ていたほうが面白いですね。 私も最初はよく分からなかったのですが、耳も慣れて、知識も増えていくと奥深いですよ。静のなかの動というか、「能かっけぇー!」という感じです。

野間口 能は格好いいんですか?

吉田 格好いいですね。

野間口 公演する場所はどういったところでやるのですか?

吉田 学校狂言は学校の体育館などですが、基本的には能楽堂で公演します。一番大きいのが千駄ヶ谷にある国立能楽堂です。自治体が運営していたり、流派の所有だったり、形態は色々ですが、能楽堂は全国各地にあって東京では10以上、かわったところでは渋谷のホテルセルリアンタワーの地下2階にも能楽堂があります。この近辺だと越谷に一箇所「こしがや能楽堂」があります。

 

▽こしがや能楽堂

 こしがや能楽堂

草加で自分のお稽古場を持つのが夢

野間口 吉田さんは、青森県八戸市のご出身ですが、草加とのご縁はどういう形でできたのでしょうか?

吉田 妻が草加の出身で草加に住んでいたので、私も結婚して4年前から住んでいます。

野間口 住み心地はいかがですか?

吉田 とてもいいですよ。どこに出るにも便利だし、物価も安いです。

野間口 草加の中で気に入ってる場所、よく行く場所などありますか?

吉田 綾瀬川沿いの松並木は、トレーニングでよく走ってます。最近、忙しくてちょっと走れてないのですが。

野間口 松は狂言とも縁が深いので、吉田さんにとって松並木が名所の草加はラッキーな場所になるかもしれませんね。将来的なプランなどありますか?

吉田 自分のお稽古場を草加にもって、草加から狂言、伝統文化を盛り上げていきたいと思っています。

野間口 お隣の越谷に能楽堂があって、草加にないのはちょっと悔しいですよね。草加は日光街道沿いに栄えた歴史もあるし、相撲どころでもあるので、伝統文化との相性はいいと思うんですけど。

吉田 相撲と能楽は共通点が多いんですよ。能楽の舞台は三間四方(三間=約5.5m)、相撲の土俵も同じ寸法です。能楽の舞台には木火土金水(もっかどごんすい/中国の五行思想由来の万物を構成する五つの要素)を表す五色の揚幕(あげまく)が張られていますが、相撲の吊り屋根に付けられた房の色も同じ五色です。明治維新になってちょんまげを切るように断髪令が出されますが、相撲と能楽にかかわる人はこれを免除されました。昔は能を見せた後、同じ場所で奉納相撲もとるみたいな共通の場があったようです。

野間口 草加の子どもたちに、伝統芸能を味わってほしいですよね。草加市にせっかく狂言師が住んでいるのですから。

吉田 今学校で狂言をしていて面白いのは、子どもたちの反応です。私たちは、ただ、狂言を見せるだけではなくて、一曲終わった後に、舞台から降りて子どもたちと一緒にワークショップを開いています。道具に触ってもらったり、狂言を実際に演じてもらったり、狂言を体験してもらう活動です。そうすると、子どもたちも非常に興味を持って、楽しそうに目を輝かせるんです。

野間口 650年経っても、まだ通じる面白さ、笑いの要素を狂言が持っている証拠ですね。

吉田 狂言は伝統芸能の入口として最適だと思います。分かりやすいし、笑える。それでいて、背景には日本の芸能の土台となった物語が流れている。狂言を観て日本の伝統芸能に興味を持って、能を観るのもいいし、歌舞伎の華やかな世界を観るのもいい。人形浄瑠璃という独特な世界もあります。日本にはまだまだ素晴らしい伝統芸能がたくさんあります。狂言がその入口になれればいいなと思っています。

野間口 グローバルな社会になればなるほど、自分の国の文化や歴史をしっかり学んで、私の国はこうだ、日本の文化はこうだと自国のことを語れることが必要だと思います。そういう意味でもグローバル社会を生きるこれからの子どもたちが、狂言を通じて日本文化を味わう、理解することには意味がありますね。草加市には31の小中学校と4つの高校、大学も1つあります。学校、子どもたちを巻き込んで、草加から狂言や伝統芸能を発信できるといいですね。本日はありがとうございました。

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